【産業界への応用の可能性】






【成果の名称】



生体分子ナノ集合体に関する二重質量分析装置の開発

Development of tandem mass spectrometer to study nano aggregates of biomolecules




【技術の概要】



リポソーム、プロテアソーム等のナノメートル程度の大きさの生体分子集合体を研究する。そこで、気相中における生体分子の集合体に関する質量分析法や衝突反応の手法を組み合わせた質量分析装置を開発する。そして、溶質である生体分子と、溶媒である水分子との協同作業によって引き起こされる組織的な相互作用を、原子・分子1個1個のレベルから直接観測する。その結果、生体分子集合体の3次元的な構造と機能を司るところの、分子内相互作用や水分子との相互作用と反応との関わりについて詳細に理解し、生体分子集合体の「かたち」と「はたらき」を精密に予測する。





【マッチングを想定する業界】



質量分析装置の開発・製造を行う業界。特に、質量分析法による生体分子の構造予測に興味のある企業。





【用途利用分野】



エレクトロスプレーイオン化法による生体分子の質量分析。イオントラップを用いた生体分子イオンの孤立状態での反応の追跡。数万ダルトンまでの質量測定範囲を持つ四重極質量分析計の開発など。





【事業化および新規産業形成の可能性】



本研究自身は学術的な色彩の濃い基礎研究であるので、現在の段階では数年以内に事業化することは難しいと思われる。しかしながら、本研究で得られた質量分析技術によって、5〜10年程度の期間で新規な測定原理を用いた質量分析装置を開発・製作する可能性がある。






【従来技術に対する新規性・優位性】



過去10数年間に開発されたエレクトロスプレーイオン化法によって、蛋白質などの生体分子を質量分析することが可能となった。本研究ではそれらによって揮発された技術をさらにすすめて、真空中で孤立状態にある生体分子の構造に関する情報を得ることを目的としている。






【実用化に向けた課題】



真空中で孤立状態にある生体分子イオンの内部エネルギーを制御すること。生体分子どうしの集合体、および生体分子と水和分子との集合体を真空中で孤立状態に生成する方法を確立すること。







【研究の見どころ】



エレクトロスプレーイオン化法によるシトクロムc、ヘモグロビン等の蛋白質の多電荷イオンの生成方法。四重極質量分析計および飛行時間型質量分析計による生体分子の質量分析。イオントラップを用いた衝突反応セルにおけるシトクロムc、ヘモグロビン等の生体分子と、ピリジン等の標的分子との間のプロトン移動反応。