講義ノート・原子力発電
エネルギー変換・講義資料
野々瀬真司
(1)原子核の壊変と放射線
1.原子の構造
・ 原子核とは
原子核は陽子と中性子という2種類の核子から構成される。[の1]陽子と中性子はほぼ同じ質量。
陽子は正の電荷を持つ。中性子は電荷を持たない。
原子核中の陽子数と中性子数はほぼ同数。重い原子核では中性子数のほうが大きくなる。[の2]
陽子と陽子の間にはクーロン斥力がはたらく。核力はクーロン斥力に打ち勝つ強い結合力。
核力は2.1X10-13cmの短い距離ではたらく短距離力。電荷には関係ない。
核力は陽子と陽子の間、中性子と中性子の間、陽子と中性子の間にはたらく。[の3]
原子の大きさは1Å(1億分の1cm)であるのに対し、原子核の大きさは1兆分の1cm。
原子の1万分の1。
・ 原子番号と質量数
原子番号とは原子核に含まれる陽子数。
質量数とは原子核に含まれる陽子数と中性子数の合計した数。
例えば酸素原子では、16Oと書くと質量数16。
・ 同位体
原子核中の陽子数が同じで中性子数が異なるもの。例えば天然ウランには234U,235U,238Uの3種類の同位体が存在する。
・ 中間子のはたらき 「のり」の粒子
陽子や中性子の間では中間子をやりとりすることで引力として核力がはたらく。
2.原子核反応のしくみ
・ 原子核の結合エネルギー 56Feで最大
結合エネルギーとは核を構成している陽子と中性子をバラバラの状態にするのに必要なエネルギーである。核子1個あたりの結合エネルギーはLiのような軽い原子核では小さく、質量数56付近のFeで最大となり、それより重い原子核では再び小さくなる。[の4]
軽い核では、体積に比べて表面積が大きいため、表面付近の核子は核力の相手がいないので、その分だけ結合エネルギーが小さくなる。重い原子核では、陽子の数が多いため、陽子間にはたらくクーロン斥力が大きくなり、その分だけ結合エネルギーが小さくなる。結合エネルギーの大きな核ほど安定である。
核反応によって結合エネルギーの小さな核から大きな核になると、その結合エネルギーの差だけエネルギーが発生する。核エネルギーを発生させるには、軽い核どうしを反応させてより重い核を生成するか(核融合)、重い核を分裂させてより軽い核を生成させる(核分裂)。
・ 核分裂エネルギー
ウラン(U)、プルトニウム(Pu)のような重い核が分裂すると2〜3個の中性子を放出する。
235U、239Pu、241Puのような質量数が奇数の核は不安定であり、速度の遅い中性子(熱中性子)を照射すると核分裂を生じる。[の5]一方、238Uなど質量数が偶数の核は、運動エネルギーが1MeV以上の速度の速い中性子(高速中性子)を照射すると核分裂が生じる。また238Uは中性子を吸収することにより核分裂性物質の239Puに変換できる。こういう物質は親物質と呼ばれる。[の6]
UやPuが核分裂を起こすと1原子あたり約200MeVのエネルギーが生じる。それはもとのUやPuと核分裂生成物との間に質量欠損が生じ、これがエネルギーとして放出されるからである。これを核分裂エネルギーと呼ぶ。 E=Δm・c2
・ 原子核反応と化学反応の違い いかに核エネルギーが大きいか
化学反応 2H2 + O2 → 2H2O によって生じる化学エネルギーは水素原子1個あたり約1.26eV。
235U + n → 140Xe + 94Srによる核分裂エネルギーは185MeVで、化学エネルギーの1億倍も大きい。
1gのUが核分裂すると石炭3000tが燃焼したのと同じエネルギーが生じる。
・ 核分裂生成物
UやPuが核分裂を起こすと、2つの非対称な核分裂片に分かれる。特定の核に分裂するのではなく、いくつかの種類の分裂片が生じる。
傾向としては質量数が80〜100、130〜150の分裂片が多く生じる。[の7]
分裂片は不安定な核である。陽子に比べ中性子が過剰。
核内で中性子が陽子と電子に分かれ、電子が核から飛び出す(β線)。あるいは中性子が核から飛び出す(遅発中性子)。
β崩壊;44105Ru → 45105Rh → 46105Pd
使用済核燃料に含まれる核分裂生成物は、高レベル放射性廃棄物となる。
・ ウラン U 原子番号92。天然元素で最も重い。
|
用途 |
存在割合 |
234U |
- |
0.005% |
235U |
核燃料 |
0.719% |
238U |
親物質 |
99.276% |
・ プルトニウム Pu 原子番号94。天然には存在しない元素。
同位体の質量数232〜246。239Puと241Puは熱中性子で核分裂する。
原子炉内でのPu生成過程;238U + n → 239U → 239Np
+ β → 239Pu + 2β
3.放射線と放射能
・ 放射線の種類
|
放射線 |
素粒子名 |
荷電粒子線 |
α線 β線 陽子線 |
4He原子核 電子 陽子 |
非荷電粒子線 |
X線 γ線 中性子線 |
光子(電磁波、波長10-8〜10-10m) 光子(電磁波、波長10-11m以下) 中性子 |
・ 放射能
放射性物質が放射線を出す性質そのもの。
放射能の強さ・・単位時間あたりに何個の核が崩壊して放射線を発生させるか。
単位;Bg(ベクレル)
1Bgとは1秒あたりに1個の核が崩壊して放射線を発生させるという放射の強さ。
1Ci(キュリー)とはラジウム1gあたりの放射能。
・ 放射線によるエネルギー生成
(荷電粒子)α線・β線の場合・・原子中の電子が荷電粒子によってはじき出され、原子はイオンとなる。
(電磁波)γ線の場合・・原子中の電子がエネルギーをもらって飛び出し、原子はイオンとなる。
中性子の場合・・核と衝突して核反応を起こす。
・ 放射線の人体への影響[n8]
DNAの自己修復機能を越える放射線が人体に照射 → 細胞内のDNAが損傷 →
遺伝情報に欠陥が生じる → 異常細胞の増殖 → 放射線傷害
細胞分裂が盛んな骨髄・生殖器・腸管・皮膚などは影響を受けやすい。胎児への影響は深刻。
放射線障害の潜伏期は長い(癌で数年以上)。
放射線の吸収量の単位;Gy(グレイ)1Gy = 1J/kg
放射線の種類による人体への影響を考慮して重みつけした実行線量の単位;Sv(シーベルト)
β線、γ線では1Gy=1Sv。α線では1Gy=20Sv。
自然放射線[n9]・・1時間あたり0.03μSv(地上)1.1μSv(成層圏を飛ぶ飛行機内)。
・ 放射線防護
外部被爆・・人体の外からの被爆。放射線源から離れると被爆は減少。
内部被爆・・人体の内部からの被爆。放射性元素が長期間にわたり体内に留まり、被爆が続く。
放射線が溜まりやすい部位;甲状腺・・ヨウ素、筋肉・・セシウム、骨・・ストロンチウム
・ 放射線遮蔽材[n10]
α線・・紙一枚、β線・・アルミ板、γ線・・コンクリート・鉛、中性子・・水・パラフィン
大雑把にいえば、火力発電所は石油やLNG、石炭といった化石燃料を燃やして熱を発生させているが、原子力発電所は核分裂反応で熱を発生させている。どちらも発生させた熱で水を沸騰させ、蒸気タービンを回して発電を行っている。したがってこのふたつの違いは、熱の発生のさせかたが違うだけである。
・ 原子力発電の利点[n13]
発電時に酸素を必要としないため、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない。
使用する燃料の重量・体積が化石燃料型の発電に比べて極端に少なくて済む。
核燃料の交換頻度が低い事や核燃料物質の国際的な入手ルート・価格がほぼ確立し安定している為に、化石燃料型の発電に比べて相対的に安定した電力供給が期待できる。
経済性が高い(発電量当りの単価が安い)という意見がある(反対意見あり)。
化石燃料資源の乏しい国でも比較的少量の核燃料を繰り返し使用する再処理技術(=核燃料サイクル)の確立により核燃料物質の入手に関わる制約が圧倒的に緩和できる。
技術力のあることが国際的にアピールできる。
海水からのウラン採取が実現すれば燃料はさらに豊富となる。
原子力発電の運転によって、核分裂により高レベル放射性廃棄物が発生してしまう。核反応を利用する以上、運転に伴う放射線や放射能、放射性廃棄物の発生が避けられず、発生した放射線はその強度によっては人体に限らず生物にとって有害(→催奇性)であるため、その扱いに関しては技術的側面に困難さがある。核現行技術では一定の安全性があるものの、ひとたび重大事故が発生すると周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ
。原子力事故は深刻な社会問題となる。
高レベル放射性廃棄物[n15]は生活の場から隔離する必要があり、多重の防護処理を施した上で地下水等の影響がない大深度地下に埋蔵するという深地層処分が策定されている。しかし、高レベル放射性廃棄物の最終処分地が決定していない。[n16]
今後原子炉老朽化により現在運転中の原子炉が使用出来なくなった場合、それ自体が放射性廃棄物となる原子炉を簡単に解体処分する訳にはいかず、電力を生まなくなった原子炉を非常に長期(放射性物質の性格から発電所として利用出来た期間より長くなる)にわたり、電力が生産出来なくなった後も維持管理しなければいけなくなる。そのコストについての詳しいデータは算出されていない
。
原子力発電の燃料であるウランの濃縮を行えば必然的に劣化ウランが生じ、使用済み核燃料にはプルトニウムや核廃棄物が含まれる。プルトニウムは核分裂爆弾などに転用することが技術的に可能であり、劣化ウランは劣化ウラン弾として、また核廃棄物をそのまま汚い爆弾として軍事転用が可能である。また戦時下では攻撃目標になる。また、発電施設および核廃棄物へのテロの危険がある。
そのため、軍事転用の制約に関わる国際社会への配慮が必要となる。
ウラン資源の可採埋蔵量に由来する資源枯渇問題
。地殻中のウラン235のみの利用を考えた場合、資源がそれほど豊富なわけではない。また、需要が多い中国などに海外での輸入の買い負けが指摘されている。
起動停止の所要時間が長い(通常停止)。
炉の特性上、通常は負荷追従運転を行わない 運転停止による損失が非常に大きく、運転率を極めて高い水準に維持し続ける必要があるため、夜間電力の利用促進など、需要の増減の調整能力がきわめて弱い。
火力発電所と比べ、施設建設に多大なコストがかかる 。
地質学的側面から、立地場所が限定される。
電気利用者・電力会社と施設周辺に住む住民との利益・不利益が相応でない可能性がある。 特に日本では、広島・長崎への原子爆弾投下や、第五福竜丸の米軍の水素爆弾実験で発生した放射性降下物(いわゆる「死の灰」)被曝の被害を受けたこともあり、放射能や放射線に対して嫌悪感を抱く人は多く、建設時には地域住民の反対運動が頻発する。一方で、原子力発電所ができると、地元には一定の雇用が期待できるほか、電源立地地域対策交付金などの電源三法交付金、固定資産税、法人税などの税収も確保できる。このことから、地域住民が賛否を巡って対立することも多い。
原子力発電所の新規建設数が減少していることからメーカーの原子力部門における技術の継承が困難となってきている。
将来の原子力発電を担ってくれる若手技術者が減少傾向にある。
1.原子力発電所の[n17]構造
・ 原子炉の中[n18]
@核分裂でエネルギーが発生する。
A熱エネルギーを持った冷却材がボイラーの水を温める。
Bボイラーで発生した蒸気がタービンを回し、発電する。
(炉心には核燃料の他に中性子の反応度を上げる減速材や発生したエネルギーを取り出す冷却材が入っている。)
・ 中性子エネルギーと核分裂 遅い中性子が反応しやすい
原子炉内で生成する中性子の運動エネルギー分布は広い。20MeV〜0eV。
235Uでは1回の核分裂で2〜3個の中性子が生成。この中性子の平均エネルギーは2MeV。
エネルギーの小さい熱中性子が核と反応する割合が高い。[の19]
高速中性子の減速が必要・・減速材は軽い原子(水素原子)を含む物質がよい。
中性子が軽い原子と衝突すると減速されやすい。減速材・・軽水、重水、黒鉛
高速中性子が熱中性子になるまで軽水で16回、重水で29回、黒鉛で91回の衝突が必要。
冷却材・・軽水、重水、ガス、鉛、ナトリウム
・ コンパクトなエネルギー源
|
1gで発生する熱量(kJ) |
1cm3で発生する熱量(kJ) |
ウラン |
82000000 |
156000000 |
黒鉛 |
32.2 |
72.5 |
石油 |
45.0 |
40.5 |
液体水素 |
142.9 |
10.1 |
・ 連鎖反応
原子炉内で核分裂により生成した中性子の一部は炉外へ漏れたり、燃料を覆う被覆材のZrや冷却材の水などに捕獲されたりして消失。
捕獲されなかった中性子はウランと反応して次の核分裂を起こす。
連鎖反応・・中性子をとおして核分裂が連鎖的に生じる。
原子炉内では中性子をよく吸収するホウ素(B)濃度の制御によって中性子数を調節。
・ 臨界
臨界状態・・連鎖反応が定常的になり、中性子数が一定になる。
(消失する中性子数 = 発生する中性子数)
・ 核燃料
採掘可能なウラン燃料 陸上250万トン、海中 約45億トン(海水中に1X10-3ppm)
ウラン鉱石1トンにウラン1kgしか含まれていない。
硫酸・炭酸ソーダに入れて浸出・溶解 → イエローケーキ →
六フッ化ウラン(気体)に転換 → 遠心分離を繰り返し、235Uを4%まで濃縮 →[n20]
酸化ウランUO2の粉末にして、プレス・焼結 → 酸化ウランのペレット →
被覆管に入れて封入 → 燃料棒[n21]
使用済核燃料[n23]を硝酸に溶かし、UやPuを取り出す。青森県六ヶ所村に使用済核燃料の再処理施設がある。
・ 核燃料サイクル
ウラン鉱山 →ウラン鉱→ 精錬工場 →イエローケーキ→ 転換工場 →六フッ化ウラン→ 再転換工場 →酸化ウラン粉末→ 成形加工場 →核燃料→ 原子力発電所 →使用済核燃料→ 転換工場 →・・・
・ 原子炉の種類[n24]
中性子のエネルギーによる分類
|
高速炉 |
熱中性子炉 |
中性子エネルギー |
約200keV |
約0.1eV |
減速材 |
無 |
多量 |
例 |
もんじゅ |
軽水炉 |
燃料・減速材・冷却材による分類
|
燃料 |
減速材 |
冷却材 |
軽水炉 |
ウラン |
軽水 |
軽水 |
重水炉 |
ウラン |
重水 |
重水 |
プルサーマル炉 |
プルトニウム |
|
|
ナトリウム冷却炉 |
プルトニウム |
|
ナトリウム |
加圧水型軽水炉(PWR)では、炉心を通る水に圧力をかけて沸騰させない。2次ループの水が沸騰してタービンを回す。一方、沸騰水型軽水炉(BWR)では、炉心を通る水が沸騰してタービンを回す[n26]。加圧水型はタービンに放射性の水が入ってこないが、構造は複雑である。沸騰水型は構造が単純だが、タービンに放射性の水が入ってくるので、それに対する防護が必要。
プルトニウムの「プル」と熱中性子の「サーマル」を組み合わせた和製英語。初めは燃料としてウランを用いて原子力発電所を運転する。使用済核燃料を再処理すると、ウランとプルトニウムの混合物(MOX)ができる。プルサーマルではMOXを燃料として用いる。使用済核燃料の再処理を繰り返すうちに次第にプルトニウムの割合が増える。
・ 高速炉
プルトニウムを燃料として用いる。軽水炉のように熱中性子を用いないので、減速材が必要ない。
使用した239Pu以上の燃料を238Uから作ることが出来る。これを燃料の増殖という。[の28](例.高速実験炉「常陽」、高速増殖炉「もんじゅ」)
・ 日本の原子力発電所の分布 [の29]
全国に16カ所の原子力発電所がある。経済性の点から現在の日本では軽水炉(沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉)が主流となっている。合計出力は約46000MWであり、アメリカ、フランスについで世界第3位。柏崎刈羽原発は出力8200MWで世界最大規模だが、大地震による被害のため、現在も運転が停止されたままである。[n30]日本の原子力発電はベースロード負荷への電力供給を専門としており、需要に合わせた電気出力の増減は原則的に行っていない。
2004年現在、日本における定格最大出力電力の約30%、電力量の約50%を担っている。[n31]一次エネルギーとしての原子力エネルギーは電力事業のみであり、日本での一次エネルギーに対する割合は15%程度となっている。原子力エネルギーにおいて、世界で最も高いウェートを示している国はフランスであり、国の一次エネルギーとしては40%、発電電力量としては75%を超えている。このように、原子力エネルギーが高い割合を占める国では、原子力発電は発電出力の変更を行わないか極めて遅いため、調整力として揚水発電[n32]や電力輸出入を活用している事が多い。フランスの場合でも、ヨーロッパに張り巡らされた送電網、特に隣国ドイツとの電力輸出入が活用されている。
・ 原子炉の制御
核分裂により発生する中性子の数を制御する。中性子吸収材(ボロン(B)、カドミウム(Cd)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er))を炉心に挿入したり、引き抜いたりする。これらの吸収材を棒状にしたものが制御棒である。運転時のPWRでは、冷却水中のボロン濃度を調製して制御する。
・ 反応度のバランス
反応度・・原子炉の反応を活性化する度合 正;出力増加 負;出力減少
制御棒反応度 挿入;負 引き抜き;正
減速材温度反応度 減速材温度上昇;負
燃焼反応度 燃焼が進む;負
・ 負の反応度フィードバック
燃料の温度上昇→ウランが熱運動を起こす→238Uの中性子捕獲効率が増加
→235Uの中性子吸収量が減少→負の反応度
減速材温度上昇→減速材密度が減少→中性子が減速しなくなる→負の反応度
・ 崩壊熱
核燃料中に蓄積された放射性物質から放たれた放射線の運動エネルギーが熱に変わるため、原子炉の運転を停止して、核分裂を止めた後も熱が発生し続ける。運転停止直後では10%程度の出力に相当する崩壊熱が発生する。運転停止後も冷却機構がしばらく動いている必要がある。
・ 原子炉の防護体制 5つの防壁[n34]
第1の防壁 燃料のペレットがセラミック状に焼結
第2の防壁 燃料棒の被覆管が耐熱性の合金
第3の防壁 原子炉圧力容器が鋼鉄製の耐圧容器
第4の防壁 原子炉格納容器がコンクリートの内側に鋼鉄が内張り
第5の防壁 原子炉建屋が厚いコンクリートでできている
・ 事故評価基準
レベル7 |
深刻な事故(チェルノブイリ原発事故) |
レベル6 |
大事故 |
レベル5 |
外部への危険を伴う事故(スリーマイル島原発事故) |
レベル4 |
外部への大きな危険を伴わない事故(JCO臨界事故、柏崎刈羽原発・直下型地震) |
レベル3 |
重大な異常事象 |
レベル2 |
異常事象 |
レベル1 |
逸脱事象(もんじゅナトリウム漏れ) |
レベル0 |
安全上重要でない事象 |
・ 原爆と原発の違い
原爆・・中性子数を制御しない
235Uを100%に濃縮する。数体の核燃料を火薬によって瞬時に合体させる。
核分裂がねずみ算式におこり、膨大なエネルギーが瞬時に発生する。
原発・・中性子数を制御する
235Uを4%に濃縮。中性子数の制御によって定常状態を保つ。
・ 放射性廃棄物[n35]
低レベル廃棄物・・発熱を伴わない。
高レベル廃棄物・・発熱を伴う。核燃料再処理で分離された核分裂生成物。
→ ガラス固化体として大深度地下に処分する。[n36]
・ 発電コスト
運転年数40年の場合、1kWhあたりの発電コストは以下の通り。
原子力 |
5.73円 |
LNG火力 |
4.88円 |
石炭火力 |
4.93円 |
石油火力 |
8.76円 |
水力 |
7.20円 |
1.
「図解雑学 原子力」、竹田敏一著、ナツメ社.
2.
「原子力発電の基礎知識」、榎本聡明著、オーム社.
3.
http://atomica.nucpal.gr.jp/atomica/index.html 原子力百科事典 ATOMICA.
4.
http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/index-j.html 、原子力情報.
5.
http://cnic.jp/ 原子力資料情報室.
1986年4月26日、
ソビエト連邦(現 ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が起こした原子力事故。4号炉はメルトダウンののち爆発し、放射性降下物がウクライナ・ベラルーシ・ロシアなどを汚染した。事故後のソ連政府の対応の遅れなどが重なり被害が甚大化・広範化し、史上最悪の原子力事故となった。
・ 爆発事故の概要
この規模の原発事故は前例がなく、世界の原子力開発で史上最悪の事故といわれている。当時、爆発した4号炉は休止中であった。原子炉が止まった際に備えた実験を行っていたところ、制御不能に陥り、炉心が融解、爆発したとされる。この爆発により、原子炉内の放射性物質[1]が大気中に大量に(推定10t前後)放出された。その放出量は莫大であり、かつて広島に投下された原子爆弾の500倍とも言われている。当初、ソビエト連邦政府は住民のパニックや機密漏洩を恐れこの事故を公表しなかった。そのため、何も知らない付近住民は避難もされないまま甚大な量の放射能をまともに浴びることになってしまった。しかし翌4月27日、スウェーデンでこの事故が原因の放射性物質が検出され、4月28日、ソビエトも事故の公表に踏み切った。日本でも、5月3日に雨水中から放射性物質が確認された。爆発後も火災は続き、消火活動が続いた。アメリカの軍事衛星からも、核の火に赤く燃える原子炉中心部の様子が観察されたという。ソビエト政府によれば、5月6日までに大規模な放射性物質の漏出は終わったとされる。
・ 死者数
死者はソビエト政府の発表では運転員・消防士合わせて31名だが、事故の処理にあたった予備兵・軍人、トンネルの掘削を行った炭鉱労働者に多数の死者が確認され、旧ソ連時代の内部資料で確認されている被害者だけで約13,000人、その殆どが既に放射線障害で死亡しており、さらに周辺住民の多くが死亡したと考えられている。最終的には40,000人に達するとロシア科学アカデミーは発表したが、当時西側諸国の思惑もあり否定されて今に至り、最終的な被害者は公表されていない。また、事故によりチェルノブイリ周辺は高濃度の放射性物質による汚染により居住が不可能になり、約16万人が移住を余儀なくされた。避難は4月27日から5月6日にかけて行われた。ソ連の発表によると、事故から一ヶ月後に原発から30km以内に居住する約11万6千人すべてが移住したという。しかし、老人などは生まれた地を離れるのを望まなかった人もおり、一部の人は移住せずに生活を続けた。爆発した4号炉をコンクリートで封じ込めるために、のべ80万人の労働者が動員された。そのうち5万人が放射線障害で死亡した。4号炉を封じ込めるための構造物は石棺と呼ばれている。事故後、この地で小児甲状腺癌などの放射線由来と考えられる病気が急増しているという調査結果もある。爆発事故による放射性物質による汚染は、付近のウクライナだけでなく、隣のベラルーシ、ロシアも多かった。
・ 原因
発端は、原子炉が停止して電源が停止した際、非常電源に切りかえるまでの短い時間、原子炉内の蒸気タービンの余力で最小限の発電を行い、システムが動作不能にならないようにするための動作試験を行っていたが、炉の特性による予期せぬ事態と、作業員の不適切な対応が災いし、不安定状態から暴走に至り、最終的に爆発した。
同実験は、原子炉熱出力を定格の20%から30%程度に下げて行う予定であったが、定格熱出力の1%にまで下がってしまい、運転員はこれを回復する為に、炉心内の制御棒を引き抜いた。これにより、不安定な運転を続ける事になった。不安定な運転により実験に支障が出ることを危惧した運転員らは、非常用炉心冷却装置を含める重要な安全装置を全て解除し、実験を強行した。実験開始直後、原子炉の熱出力が急激に上昇しはじめた。運転員は直ちに緊急停止を試みたが、この原子炉は特性上制御棒を挿入する際に一時的に出力があがる設計だったため、その際に原子炉内の蒸気圧が上昇し、緊急停止ボタンを押した6秒後に爆発した(緊急停止ボタンを押したために原子炉が暴走したとする説(→制御棒を挿入しようとしたが、大きい音と共に挿入が停止した)もある)。
この爆発事故は、運転員の教育が不十分だったこと、特殊な運転を行ったために事態を予測できなかったこと、低出力では不安定な炉で低出力運転を続けたこと、実験が予定通りに行われなかったにも関わらず強行したこと、実験の為に安全装置をバイパスしたことなど、多くの複合的な要素が原因として挙げられる。後の事故検証では、これらのどの要素が欠けても、爆発事故、或いは事故の波及を防げた可能性が極めて高いとされている。
当初ソビエト政府は、事故は運転員の操作ミスによるものとしたが、のちの調査結果などはこれを覆すものが多い。重要な安全装置の操作が、運転員の判断だけで行われたとは考えにくく、実験の指揮者の判断が大きかっただろうと考えられる。
・ 影響
爆発時、炉心内部の放射性物質は推定10t前後大気中に放出され、北半球全域に拡散した。周辺地域の家畜に放射性物質が蓄積され、肉、ミルク等も汚染された。2000年4月26日の14周年追悼式典での発表によると、ロシアの事故処理従事者86万人中、5万5千人が既に死亡した。またウクライナ国内(人口5千万)の国内被曝者総数342.7万人の内、作業員は86.9%が病気にかかっている。周辺住民の幼児・小児などの甲状腺癌の発生が高くなった。
・ 事故後のチェルノブイリ
事故後、放射能汚染により人が立ち入ることができなかったことから原発事故の直撃を受けた職員の遺体が搬出されることがなかった。現在も、石棺の中に数名の職員の遺体があるという。石棺の中では、放射性物質拡散防止のために特殊な薬剤が散布されているが、大半が外部に流出しているとみられている。石棺はこの場合効果的な封印手段ではなく、石棺の建設は応急処置である。大半は産業用ロボットを用いて遠隔操作で建設されたために老朽化が著しく、万が一崩壊した場合には放射性同位体の飛沫が飛散するリスクがある。より効果的な封印策について多くの計画が発案、議論されたが、これまでのところいずれも実行に移されていない。年間4,000kl近い雨水が石棺の中に流れ込んでおり、原子炉内部を通って放射能を周辺の土壌へ拡散している。石棺の中の湿気により石棺のコンクリートや鉄筋が腐食しつづけている。その上事故当時原子炉の中にあった燃料のおよそ95%が未だ石棺の中に留まっており、その全放射能はおよそ1,800万キュリーにのぼる。
[の1](※図/原子の構成)
[の2](※図/グラフ 原子核中の陽子数と中性子数)
[の3](※図/原子核崩壊のポテンシャル)
[の4](※図/グラフ 核子の結合エネルギー)
[の5](※図/グラフ 235Uの断面積)
[の6](※図/グラフ 238Uの断面積)
[の7](※図/グラフ 核分裂生成物の分布)
[n9]※/pamp01 p3
[の11](※/原子力発電のしくみ/ power point原子力発電のしくみ) http://www.tepco.co.jp/nuclear/atomic-guide/agver2/setumei2/2-01-j.html
[の12](atomica/
原発と火力との比較.gif)
[n13]※/pamp02 p3-p7, pamp03 p2
[の14](原子力情報資料室/ なぜ脱原発か.doc http://cnic.jp/modules/about/article.php?id=15
[n16]※/放射性廃棄物の地層処分施設
[n18]pamp03 p5-8
[の19]※図/235Uの断面積
[n20]※/ウラン濃縮
[n21]※/燃料集合体
※
[の22]/核燃料のリサイクル/ 核燃料のリサイクル.ppt
※ /pamp02 p23−25
http://www.tepco.co.jp/nuclear/atomic-guide/agver2/setumei4/4-01-j.html
[n23]※/pamp3 p9 使用済み核燃料の写真
[n24]※/pamp3 p5 原子炉の写真
[n26]※/pamp3 p7 タービンの写真
[の28](※図/ 高速炉)
[n30]※/柏崎刈羽原子力発電所view
[n31]※/ pamp02 p3
[n32]※図/揚水式発電所
[n34]※/pamp2 p11
[n36]※/放射性廃棄物の地層処分施設