基盤科学系　クラスター科学研究室

担当：野々瀬真司（専門：物理化学、クラスター科学）



研究内容
　クラスターとは原子や分子が数個から数十個凝集した集合体です。我々の研究室では、エレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析装置を手作りで製作し、これを用いてアミノ酸・ペプチド・蛋白質等の生体分子に多数の水分子が付着したクラスターを、真空中に孤立状態で生成します。そして気体分子と衝突反応等の手法を用いて、これらのクラスターの構造と性質について研究しています。

研究の背景
　蛋白質や核酸等の生体分子は「水」の中で多様な機能を発現して生命現象を営んでいます。ところが生体分子も水も、それらがばらばらに孤立して存在する場合には、無生物と同様な単なる「物質」にすぎないのです。これが集合して互いに強い相関を持って協同的・組織的に作用するときに、非加算的・複合的な現象として生命活動が発現されるはずです。特に、生体分子を取り囲んでいる水分子が生体分子表面の極性原子団と水素結合する事によって、生体分子の運動を制御していると予想されています。このような生体分子と水分子との相互作用が、生体分子の３次元的な構造の形成と機能の発現に関して重要なのです。しかしながら、液相中の蛋白質では周囲にある無数の水分子が溶媒和しており、それらの水分子との複雑な相互作用のために、蛋白質の振る舞いを詳細に調べることが困難です。生体分子は本来、生体中で機能するものであり、真空中へ取り出して孤立状態にある生体分子は、本来の環境から相当にかけ離れたものですが、生体分子の３次元的な構造と機能を司るところの、分子内相互作用や水分子との相互作用と反応との関わりについて詳細に理解するためには、生体分子を真空中の孤立状態で研究することが重要なのです。

備考
　平成16年4月に出来たての新しい研究室です。物理・化学・生物の全域にまたがる新しい境界分野の開拓を目指しています。我々の研究に興味のある方は、是非一緒に研究してみませんか。学部における分野、卒研テーマは問いません。いつでも見学・相談に応じますので、気軽に御連絡下さい。

最近の発表論文
1. Structures and Reactions of Hydrated Biomolecular Cluster Ions, S. Nonose, S. Iwaoka, K. Mori, Y. Shibata, and K. Fuke, Europ. Phys. J. D, 34 315-319 (2005).
2. Ultrafast Relaxation Process of Excited-State NH4 Radical in Ammonia Clusters, N. Okai, A. Takahata, M. Morita, S. Nonose, and K. Fuke, J. Phys. Chem. A, 108 727-733 (2004).
3. Photoionization and Photodissociation Processes of Multiply-Charged Cytochrome c Ions Produced by Electrospray Ionization, S. Nonose, H. Tanaka and K. Fuke, Mem. Grad. School Sci. & Technol., Kobe Univ., 22-A 21-31 (2004).
4. Photo-Induced Reactions of Biomolecular Ions Produced with Electrospray Ionization, S. Nonose, S. Iwaoka, H. Tanaka, N. Okai, T. Shibakusa, and K. Fuke, Europ. Phys. J. D, 24 335-338 (2003).
5. Photo-Induced Reactions of Hemin+(DMSO)n Clusters (n = 0-3) Produced with Electrospray Ionization, S. Nonose, H. Tanaka, N. Okai, T. Shibakusa and K. Fuke, Europ. Phys. J. D, 20 619-626 (2002).
6. Electronic Spectra and Structures of Solvated NH4 Radicals, NH4(NH3)n (n = 1 - 8), S. Nonose, T. Taguchi, F. Chen, S. Iwata and K. Fuke, J. Phys. Chem. A, 106 5242-5248 (2002).


Last update 2006. 4. 1





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