【教育活動】


 講義においては、化学全般について要点を簡潔明瞭かつ分かり易く教えるように心掛けたい。講義を受ける学生たちには、煩雑な知識の丸暗記ではなく、自分でものを考えていく習慣をつけさせるように促す。そのためには、まず教師自身がものを考えなければならない。勿論、教師は講義時間の5倍程度の時間をかけて入念に講義の準備を行ない、講義内容を熟知しておくことが必要である。しかし、教師自身が壇上においてもう一度自分の頭のなかを白紙に戻して、講義内容を第一原理より順を追って導いていくことが重要である。つまり、教師自身が講義内容をひとつひとつ理解していく過程を学生たちに披露し、その思考の過程を追体験させるのである。そのような授業をとおして、学生たちにものを考える習慣が自然に根付かせるように努める。
 単に教師から学生へ壇上から講義するだけの一方方向の教育では不十分である。教育とは本来対話をとおして営まれるものだと思われる。教師は講義の後で、学生一人一人と講義内容について議論する機会を頻繁に持つことが必要である。学生との対話をとおして、彼らの講義内容に対する理解や知的関心の度合を推し量り、絶えず自分の講義を自己批判して、講義内容に反省や改良を加えていくことが重要であると思われる。



国際総合科学部生・国際総合科学研究科理学専攻学生への講義

「反応の化学b」(国際総合科学部1年・共通教養科目・後期)
原子と分子・気体の性質・反応速度論・化学平衡等の項目に関する基礎的な概念についてごくごくやさしく解説する.

「反応の科学b」(国際総合科学部2年・基礎科学講義共通広域科目・前期)
化学反応に関する基礎的な講義である. 授業では, 化学反応全般の基礎についてごくごくやさしく解説する.

「ナノ物質創製概説 」(国際総合科学部3年・基盤科学コース・専門教養科目・前期)
原子・分子が10〜1000個程度で凝集したナノメートル領域の集合体は、バルクの液体・固体とも、また気相に孤立した原子・分子系とも異なる新しい物質系であり,最先端のナノテクノロジーの重要な基盤材料として,超微粒子・金属クラスター・生体高分子・フラーレン・カーボンナノチューブ等の物質が注目されている.本講義では,これらの新しい物質系を生成する方法,およびその特異的な構造・機能について詳しく解説する.さらに,これらの物質のナノテク産業への応用等に関する将来への展望について概説する.

「エネルギー変換」(国際総合科学部3年・基盤科学コース・専門教養科目・後期)
エネルギー問題や環境問題は,今日人類が直面している地球規模の問題である.本講義では物理化学の視点から見た場合に,エネルギー問題がどのように理解できるのについて詳しく解説する.

「先端物性測定実習I・質量分析2・エレクトロスプレーイオン化法」
(国際総合科学部3年・基盤科学コース・専門教養科目・前期)

エレクトロスプレーイオン化法を使い,いくつかのペプチド・蛋白質の多電荷イオンが生成することを実験で確認し,どのようにしてそれらのイオンが生成するのか理解する.また,イオンが中性ガスとの衝突によって分解反応を起こすことを実験で確認しながら,その理由についても理解を深める.


「先端物性測定講義I・質量分析2・真空と質量分析装置」
(国際総合科学部3年・基盤科学コース・専門教養科目・前期)





「分子構造変換論」(理学部3年・前期・2004-2006年度)
化学反応の速度及び反応動力学に関する講義である. 授業では, 反応速度論の基礎についてごくごくやさしく解説する. 随所に具体的な演習を行い実践的な理解を深めるように努めたい.また, 代表的な幾つかの反応速度理論を紹介して, 化学反応を分子論的な観点から把握させる.

「溶液科学序説」(理学部2年・後期・2004-2006年度)
この世界は多種多様な無数の物質から成り立っている. 僅か一滴の水にさえ10の20乗個もの分子が含まれている. 分子の複雑なミクロの挙動をマクロの物理量によって記述するために, 熱力学の理論が確立されてきた. 授業では, 熱力学の基礎についてごくごくやさしく解説するとともに, 随所に具体的な演習を行い実践的な理解を深めるように努めたい.

「理学部環境理学科専修実験・物理化学実験・密度と粘度」(理学部3年・後期・2004-2006年度)
溶液の密度および粘度は溶質の濃度によって異なるが、特に混合液体の密度および粘度は組成比とともに著しく変化する。またその効果は液体中の分子状態に関係している。本実験では、 オストワルド型密度計およびオストワルド毛管粘度計を用いて、さまざまな組成比にある水-エタノール溶液の密度と粘度を測定し、混合液体中での分子の状態を考察する。




「クラスター科学特論」(大学院基盤科学系・前期博士課程・前期・集合体制御部門の中心科目・2004-2008年度)
気相と凝縮相との中間状態であるクラスターの持つ物理的・化学的性質とその反応性に関する基本的な概念について分かり易く解説する。

「クラスター科学講究」(大学院基盤科学系・後期博士課程・後期・集合体制御部門・2004-2008年度)
クラスターの構造と反応ダイナミクスに関する専門的な知識を講義する。




「物質計測科学科学特論T」(博士前期 生命ナノシステム科学研究科 ナノシステム科学専攻)
気相と凝縮相との中間状態であるクラスターの持つ物理的・化学的性質とその反応性に関する基本的な概念について分かり易く解説する。

「ナノバイオ物質科学概説」(博士前期 生命ナノシステム科学研究科 ナノシステム科学専攻)
生体物質の構造と機能についてその基礎科学的背景から最新のトピックスまで概説する。 クラスターの創製やその計測に関して最新のトピックスまで概説する。 タンパク質の同定に使われる質量分析法の基礎から応用まで最近のトピックスも含めて概説する。 生体分子ナノシステム系の中で、光合成系や視物質などの光が関与する過程を学習する。 近年、糖化学は生化学的にも、またバイオマスの中心的物質としても注目を集めている。それは何故か。また糖化学の基本について理解することを目標にする。

「英語プレゼンテーション技術」(博士前期 生命ナノシステム科学研究科 ナノシステム科学専攻)





「力学について」(全学部新入生対象・2005-2006年度)
 ・・・・ 国際総合科学部新入生に対する特別講座・大学で自然科学を学ぶための基礎知識 ・・・・

 一般的に学問とは本来体系的なものである。大学で学問を修得することは、いわば地面に煉瓦を積み上げて建物を造るようなものである。土台から始めて下から順番にひとつづつ煉瓦をがっちりと組みあげていかないことには、堅牢な建物を構築することはできない。どこか一部分にぐらぐらとした不安定な箇所があるのをそのまま放置してその上に煉瓦を積んでいけば、やがて建物全体が倒壊してしまうであろう。

 国際総合科学部で学ぶ専門的な授業は、高校で学んでいるはずの物理や化学を前提としている。しかしながら、大学に入学した学生のうちのかなりの人数が高校で物理の授業を受けていない。これでは、大学での授業を満足に理解できるはずがない。

 特に、国際総合科学部・基盤科学系においてはナノサイエンス・ナノテクノジーに関する先端的な研究を展開している。そこでは、原子・分子の世界を理解するために、量子力学を中心とした物理学が必要不可欠である。ところが、量子力学の学問体系は古典力学や電磁気学を前提して構築されている。よって、量子力学を学ぶためには、その前にまず古典力学や電磁気学を修得する必要がある。

 そこで、我々国際総合科学部・基盤科学系の教官は、高校で物理を履修しなかった新入生に対する特別講座を開講する。高校での修得する力学の基礎についてエッセンスをまとめて講義する。随所で演習をおこない、古典物理に関する基本的な理解を深めるように努める。





 授業に積極的に参加することが理解を助ける. 一緒に楽しく勉強しよう.ただし,授業にはきちんと出席して参考書による復習をおこなって欲しい.学生諸君には, 演習をとおして物理化学の基礎を修得して貰えればよいと思う. 授業の中で自分の興味を覚えた部分を掘り下げて理解を深め, 将来の自分の専門に役立てて欲しい. 万物は多種多様な物質から構成されている. 授業から得られた知識は, 万物のふるまいを理解する道具として必ずや将来の専門にも役立つと思われる.